2011年03月16日

転載:【原子力事故】メルトダウンって、どのくらい危険??

引き続き、元原子力技術者であり、株式会社ファブリッジ 代表の諸井太郎さんが書かれた、メルトダウン(炉心溶解)についての大変わかりやすい解説をご紹介します。(転載元:Facebook諸井さんのページより)



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【原子力事故】メルトダウンって、どのくらい危険??

第2弾は電話でリクエストがありました「メルトダウン」です。
「メルトダウン(炉心融解)」が起こると大変なことになるの???

...
(初めて読まれる方は、この前のトピック、

 「今、逃げるべき???」【原子力事故】とあなたの身体

 から、読んでくださいね。)



「メルトダウン(炉心融解)」が起こると大変なことになるの???

という質問がありますが、



答えは、「YES」でもあり「NO」でもあります。




「は?何言ってるの・・・???」って思いますよね。^^;



「メルトダウン」ってひと言で言っても、どの状態かによって全然違います。



一番最悪の「メルトダウン」は、燃料がドロドロに溶けて、


原子炉のお釜(=専門用語では「原子炉圧力容器」といいます。)


を突き破ってお釜の外に出てきてしまうことです。




もしこうなったら、「今すぐ逃げろ!!!」レベルです。




でも・・・


今回のように「燃料棒の一部が溶けた」状態では、


「逃げるにはまだ早い」と言えます。





「それって・・・何が違うの??」


そう思いますよね。




実は、原子力発電所は、放射能を外に出さないよう、

「5重の壁」で守っています。




5重の壁とは・・・


イメージしやすいように外側からいきますね。^^



5番目の壁:コンクリートでできた建物

(専門用語では「原子炉建屋」といいます。)


例の爆発でふっとんだ奴です。

ということで、この壁はもう無いわけですね。^^;
(1号機・3号機はね。)



4番目の壁:鋼鉄製の超巨大な容器

(専門用度では「原子炉格納容器」といいます。)

これが壊れるとかなり辛いですね。


分厚い鋼鉄製の容器で、この中は「窒素」が充填されてます。

ですので「水素」が出ても「酸素」が無いので爆発しないです。




3番目の壁:原子炉のお釜

(専門用語では「原子炉圧力容器」といいます。)


このお釜の中に燃料や水が入ってます。
ある意味、原子炉の主役ですね。



2番目の壁:燃料棒の皮

(専門用語では「燃料被覆管」といいます。)

これが今回「一部」溶けちゃったものですね。




1番目の壁:燃料棒の中のミニミニの固まり(核物質が出てこないように焼き固めて閉じこめたもの)

(専門用語ではペレットといいます。)


これも、今回「一部」溶けちゃったものですね。^^;





整理しましょう。



まず、水素爆発で一番外の建物が壊れたので、


5重の壁がなくなり、残り4重ですね。



このうち、燃料棒は一部溶けていたとのことなので、


1重、2重の壁が「一部」破られた状態です。



ここで、「一部」ってのは大事です。


全部溶けたのと、一部溶けたのは違います。



放出される放射能の量が全然変わってきます。





で、健全なのが、残りの2つ、


3重、4重の壁ですね。



3重、4重が健全。1重、2重がやや弱い健全。



これなら、まだ今のような「少し放射能が出てる・・・」


状態で済みます。




しかし、もし燃料がドロドロに溶けて、それがお釜の下に落ちて溜まって、


そして、3重の壁=お釜を突き破った場合は、話が違います。




その場合は・・・


燃料がドロドロ=1重の壁、2重の壁が完全に喪失。



お釜を突き破った=3重の壁が破られた



水素爆発も既に起きた=5重の壁が無い・・・



ということで、そうなると唯一「4重の壁」巨大な鋼鉄の容器(原子炉格納容器)だけになります。



こうなると、4重の壁が破られるのも時間の問題になり、


大量の放射能が外に出てしまう・・・




そうすると、モニタの値もどんどん上昇していくわけです。


今の最大400ミリシーベルトなんかでは済まないです。








ですから、「メルトダウン(炉心融解)」と言っても、


燃料の一部が溶けただけの今の状態と、



本当に燃料が全部ドロドロに溶けて、お釜を突き破るのは全然違うわけです。




「じゃぁ、その最悪のメルトダウンにはならないの???」


・・・そう思いますよね。



答えは、現時点で「なる可能性はかなり低い」と言えます。




なぜか?



原子力の3原則は


1.「止める」

2.「冷やす」

3,「閉じ込める」です。



このうち、

1.の「止める」は地震発生時に達成されましたね。



今回は、

2.の「冷やす」で、とどこおっているわけです。



これはどういうことか。


まず「止める」つまり、核分裂反応は止まったわけです。←これ、一番大事。


 (ちなみに、チェルノブイリは「止める」ができず、暴走して爆発しました。
 
  さらにちなみに、チェルノブイリは、日本の原子炉とは全然違う、水を使わない原子炉です。
 
  水の代わりに黒鉛を使います。黒鉛は制御が大変ですが建設費は安いんです。汗)





次の「冷やす」

これは、核分裂反応は止まったけど、まだめっちゃ熱い状態だから、

「余熱」があるんだよねー。って状態です。



普通は、この余熱を取り去るのに、

水がたっぷりあって、それで冷やせばおしまい。


だったのですが、



今回、その水が足りなかった。




なので、余熱が取れずに、燃料が「一部」溶けたってことです。



でも、「余熱」なので、基本的には時間とともに、熱は下がってきます。

曲がりなりにも、これまでずっと水を入れてますので。


時間の経過を考えても、もう止めてから丸4日間・・・経っています。



1号機、3号機は、今も水で満たしているということなので、

余熱がとれてどんどん、安全な方向に向かっているでしょう



2号機も基本的には同じです。


ただ余熱を取る水が少なかったので、冷えるスピードが遅いわけです。




このだんだん冷やされている状態から、


燃料がドロドロに溶けて、お釜を破るようなメルトダウンが起きるかと言うと、


可能性は低いと言えるでしょう。





なぜなら、水かけて、時間も経過して、冷える方向に向かってるのに、


それに逆行する話ですからね。




いずれにせよ、

今のように、海水入れながら冷やしていれば最悪のメルトダウンは起きません。




しかし、また水が「ずっと」入らなくなれば、

「冷やす」ができなくなり危険な方向に向かうでしょう。





・・・ということで、


結局、私達が一番注意して見ておくべきは、


先のトピックで書いた「モニタの値」です。




万一、最悪のメルトダウンの方向に向かえば、



必ず、モニタの値が上昇していきます。



ミリシーベルトの値がどんどん上昇していきます。




そうならずに、マイクロシーベルトで安定しているうちは、大丈夫です。



やはり、冷静にモニタの数値を見るのが大事ですね。




結局・・・結論は一緒です。


−−−−−−−−−−−−−転載ここまで−−−−−−−−−−−−−−



メルトダウン。むやみに恐れず、冷静に事態を見守りたいと思います。
posted by シュミーデひとつや at 23:02| Comment(5) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

転載:「今、逃げるべき???」【原子力事故】とあなたの身体

●2011/3/25付で記事修正いたします

●当エントリー内の転載記事内容について、

●「200ミリシーベルト以下なら大丈夫」

●という点について、「数値が高すぎる」というコメントを複数頂きました。



●元原子力技術者の方の文章ということで安心して転載しておりましたが、ニュース等で伝えられているとおり、原発の現場作業者ももっと低い数値基準で作業されているようです。

●当ブログでは、以下の転載記事の、

●「単位に注目するとデータを理解しやすい」
●という点を評価して、記事の削除はいたしませんが、
●以上の趣旨をご理解の上ご高覧くださいませ。

●公に向けて記事を書くということは、なかなか難しいことですね…^^;


●以上まで修正


元原子力技術者であり、株式会社ファブリッジ 代表の諸井太郎さんが書かれた、放射能についての大変わかりやすい解説をご紹介します。(転載元:Facebook諸井さんのページより)


−−−−−−−−−−−−−以下転載−−−−−−−−−−−−−−


「今、逃げるべき???」【原子力事故】とあなたの身体

世間が大混乱している原子力事故。
【原発の放射能】が【あなたに及ぼす影響】について書きますね。

...
役人と東電の説明が、あれほどわかりにくくて、
メディアが騒ぎ立てれば、みんな不安になりますよね。。。汗


私、元、
東京電力原子力技術者(原子力発電所の運転経験5年)
さらに、原子力トラブル発生時のマスコミ・官庁対応チームだった経歴から、


今「逃げるべきか?」「まだ平気なのか?」悩んでいる方々に説明します。


■1番大事なこと

事故の内容よりも、結局「放射能がどのくらい出ているのか」をチェックすること。


燃料が溶けようと、火事が起ころうと、大事なのは、

「放射能が外に放出されているか」どうかです。


そして、「その値がいくつなのか」です。


まず「単位」に注意してください。


報道では、計測された放射線の値として
「マイクロシーベルト(μSv)」とか「ミリシーベルト(mSV)」とか言っています。


これ、大事です。

「マイクロ」と「ミリ」では、【1000倍】違います。

【マイクロシーベルト】→【ミリシーベルト】→【シーベルト】

1000マイクロシーベルト=1ミリシーベルトです。


・・・っで、肝心なのが、

「いくつになったら、身体に影響がでるの???」ってことですよね。




答えは・・・

「200ミリシーベルト(200mSv)以下は大丈夫」

ということです。(図を見てくださいね。)



覚えておいてください。





これはマイクロシーベルトにすると「20万マイクロシーベルト」です。


・・・ということで、マスコミが

「500マイクロシーベルト」とか、「1000マイクロシーベルト」とか

報道しているうちは、全く相手にしなくていいわけです。



たとえば、病院でCTスキャンを1回やると、

「6900マイクロシーベルト」です。


それから比べたら、

500マイクロや1000マイクロは

大騒ぎする話では無いのがわかると思います。(あなたの身体への影響という意味でね。)




では、3月15日(本日)

「3号機の近くで400ミリシーベルトの値が出た」

というのはどうでしょう?


これは問題ですね。汗

200ミリシーベルトを超えているわけですから。



でも、慌てないでください。


大事なのは単位です。

単位は「400ミリシーベルト/h」です。



つまり、3号機の横に、1時間ぽけーっと突っ立ていると、

400ミリシーベルト、放射線を受けますよ。(←つまり被ばくしますよ)ってことなんです。



これを読んでる人で、3号機の横に住んでる人・・・もちろんいませんよね。^^;




さらに、知っておいて欲しいのは、


放射線の影響は、「距離の2乗に反比例する」という性質です。


これはどういうことかと言うと、

放射線を出すものから、離れれば離れるほど、放射線の威力はものすごく小さくなるということです。


例えば、「2m離れれば1/4」、「3m離れれば1/9」という具合です。

(1つ前のトピックの図を参照してください。)


ということで、400ミリシーベルトがそのまま影響するわけではなく、



実際は、ものすごく小さな値になるのがわかると思います。


だから、「東京から今すぐ逃げよう!」なんて考えるのは、早すぎるわけです。




大事な事は、「放射線の値」を確認すること。


一時的に400ミリ出ても、その後下がってマイクロシーベルトの世界に入れば、

騒ぐことはありません。



400ミリが、1000ミリ、2000ミリと、どんどん上昇していくようなら、

そのときは、いよいよ「逃げる準備」を始めて警戒していけばいいのです。




「値」と「その傾向」

上がってるのか、下がってるのか。


これを見極めてくださいね。






さらに不安な方へ・・・




次に、こんな疑問があるかも知れません。


「では、なぜ近隣住民に避難命令が出ているの?」

「東京都内でも、放射能を検出したって話だよ」



答えは、

「放射能は、空気中のチリやホコリとともに、風に乗って移動するから」

です。


「えっ?」「じゃぁ逃げなきゃ!」っと思いたくなるかも知れません。


でも、慌てないでください。



基本的に、風に乗って放射能は「拡散」します。


つまりどんどん薄まっていきます。


薄まれば薄まるほど、威力は弱まります。



こちらも、モニタの「値」を気にしましょう。



例えば、東京近郊での数値は「約1マイクロシーベルト/h」だったわけです。


これは全然問題ありません。


たとえば、先ほども書きましたが、

病院でCTスキャンを1回やると、

「6900マイクロシーベルト」です。



これは1時間じゃなくて、1回です。(全然違います。)

6900マイクロシーベルト/回

ということです。




それに対して、「約1マイクロシーベルト/h」は、

「そこに1時間いたら1マイクロシーベルト、放射線の影響を受けるよ。」

ということです。



値の意味さえを知っていれば、

「マイクロシーベルトのレベルであまり騒ぐ必要は無い」

ことがわかると思います。




どうでしょう?


これらを知っておけば、


世間の動きに流されて、


「今すぐ逃げろ!」とならずに済むと思います。



冷静に数値を見て、冷静に判断しましょう。


参考にしてもらえたら嬉しいです。


わかりにくいところは、お気軽に言ってくださいね。



元の図の出展:資源エネルギー庁 ホームページ
http://www.enecho.meti.go.jp/rw/hlw/qa/pdf/sanko02.pdf#search=%27%E6%94%BE%E5%B0%84%E7%B7%9A%20%E4%BA%BA%E4%BD%93%20%E5%BD%B1%E9%9F%BF%20pdf%27
作成: 諸井 太郎



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すばらしいです! よくわかりました。むやみに恐れず、事態を見守りたいですね。
posted by シュミーデひとつや at 22:50| Comment(2) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする